我々は、たばこ煙水抽出液(CSE)中にperoxynitrite類似反応物質が存在することを明らかにしてきた。今回は、たばこ煙に含まれるperoxynitrite類似反応物質が肺胞壁を透過し、酸化ストレスを引き起こすかどうかについて検討した。 正常ラットをウレタン麻酔下、たばこ煙のガス相(タールやニコチンなどの粒子を除去)を吸入させ、経時的に採血し、血中の種々酸化ストレスマーカーを測定した。また、ミエロパーオキシダーゼの関与を明らかにするため、その酵素阻害剤アプロチニンの前処置による影響も調べた。 その結果、喫煙直後から血清タンパク中の3-nytrotyrosine値が増加し、30分後の再喫煙により、その増加は顕著となり180分以上持続した。アプロチニン前処置により喫煙開始初期の増加は抑制されたが、60分以後にみられる増加には影響を及ぼさなかった。3-Cholorotyrosine値の増加はアプロチニン前処置により完全に抑制された。8-Hydroxydeoxyguanosine値は喫煙直後から著明に増加し、総コレステロール値は著明に減少したが、いずれもアプロチニン前処置による影響は認められなかった。 以上の結果より、たばこ煙中に存在するperoxynitrite類似反応物質は、肺胞壁を透過し、血中の酸化ストレスを増大させることが明らかとなり、喫煙による動脈硬化発症機序の解明に向けてのあらたな研究方策が示唆された。
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