研究課題
基盤研究(C)
喫煙が心筋梗塞や脳卒中のような動脈硬化性疾患の重大な危険因子であることは、多くの疫学調査によって明らかにされている。たばこ煙にはフリーラジカルなど多種のオキシダントが含まれていることから、喫煙は外因性酸化ストレスとして作用し、循環血液中に酸化ストレスの影響を及ぼすことによって、血管壁を障害、動脈硬化形成を促進させると推測される。本研究は、このような「喫煙-酸化ストレスー動脈硬化形成」という一連の過程を体系的に解明したものである。その研究実績の概要について以下に述べる。1.たばこ煙水抽出(CSE)中に存在する安定なオキシダントであるONOO一類似反応物質が、(1)人工結合組織膜及びラット摘出肺の肺胞壁を容易に透過した、(2)肺胞マクロファージを活性化させなかった、(3)培養血管内皮細胞を障害し、アポトーシスを誘発させた。2.喫煙によって、ヒト及びラットの血液中にONOO^-反応物質の変化(LDLの酸化及びニトロ化、他の酸化ストレスマーカーの増加)が急速に(たとえ喫煙者でも)生じることを証明した。3.アポE欠損(KOR)マウスに喫煙処置(一日15分間、16週間)すると、酸化ストレス増大とともに動脈硬化形成が促進された。以上の結果から、喫煙した場合、たばこ煙が気道や肺胞の水分に溶解してCSEを生成し、CSE中の安定なONOO類似反応物質が肺胞壁を透過し血液中に到達して、LDLを徐々に酸化及びニトロ化して変性し、生成した酸化LDLを介してあるいはONOO^-類似反応物質が直接に血管内皮細胞の機能を障害し、DNAの酸化損傷も加わって動脈硬化の発症・進展を促進すると考えられる。今後は、たばこ煙中のONOO一類似反応物質の化学構造を決定し、このオキシダントに対する特異的な抗酸化物質を発見することが課題となる。
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