研究概要 |
1 PCBの代謝機構と動物種差 PCBの水酸化代謝における動物種差を、KC500を投与したラット、マウス、ハムスター、モルモットを用いて調べた。ラット、マウスでは水酸化体として4-OH-PCB107が主として生成したが、ハムスターでは水酸化体よりもカテコール体が大量に生成し、血液に残留した。一方、モルモットでは3-メチルスルホン体の生成量が最も多く、組織に残留し、methylsulfonyl-hydroxy PCBが検出された。生成したカテコール体は血液に残留し、その母化合物はすべて2,5-または2,3,6-塩素置換PCBであることが明らかになった。 2 PCBカテコール体の生成経路 CB101のカテコール体代謝経路を動物肝ミクロゾームで調べた。フェノバルビタール(PB)処理により3'-OH体および3',4'-diOH体が、メチルコラントレン(MC)処理により4'-OH体および3',4'-diOH体が促進された。3',4'-diOH体は3'-OHおよび4'-OH体から容易に生成され、PB処理により著しくその生成量が増加した。また、CB101から3',4'-diOH-CB101への酸化反応は主としてPB誘導性CYP2B酵素によって触媒され、その基質特異性は4'-OH体>3'-OH体>CB101の順であることが分かった。 3 PCB代謝物の分析法の確立とヒト血液中における曝露実態 ヒトの血液中にはPCB水酸化代謝物(4-OH-CB107,4-OH-CB146,4-OH-CB187)が、母PCBと同程度、総PCBの1/10程度の濃度で残留していることが分かった。ヒトにおけるPCBカテコール代謝物の定性、定量を行うために、PCBカテコール体のジメチル誘導体(veratrolic PCB)18種を合成した。GC/MSにおいてEI法、ECNI法における選択イオン検出法を確立し、福岡県住民から採取した血液から3,4-(OH)_2-2,3,6,2',4',5'-hexachlorobiphenylを検出した。このカテコール体濃度はOH-PCBの主成分である4-OH-PCB187や母PCB149より高濃度であることが分かった。今後、この新規代謝物を含めた代謝物のモニタリングならびにリスク評価が必要である。
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