研究課題/領域番号 |
16590105
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
保坂 公平 群馬大学, 医学部, 教授 (70108992)
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研究分担者 |
久保原 禅 群馬大学, 生体調節研究所, 助教授 (00221937)
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キーワード | 細胞性粘菌 / 分化誘導因子 / DIF-1 / DIF様因子 / 白血病細胞 / 増殖抑制 / Dictiostelium mucoroides / 4-methyl-5-n-propylbenzene-1,3-diol |
研究概要 |
細胞性粘菌Dictiostelium discideumの柄細胞の分化には、細胞が分泌する脂溶性の分化誘導因子DIF-1が必須である。申請者等は、DIF-1が粘菌柄細胞分化誘導のみならず、ヒト及びマウスの白血病細胞の増殖を阻害し、分化の誘導をすることを明らかにしてきた。この結果は、i)ある種の腫瘍細胞の再分化と粘菌の柄細胞分化には何らかの共通の機構が存在する、ii)粘菌以外の生物種にもDIF様因子が存在する、iii)DIFアナログ、又はDIF様因子が全く新しいタイプの抗腫瘍因子・分化誘導因子として、ガン治療等に応用できる可能性があることを示唆している。 昨年度我々は、たくさんのキノコのスクリーニングを行った結果、ナラタケモドキとマスタケの子実体に、DIF様因子の活性があることを見出した。一方既に我々は、細胞性粘菌のD.brefeldianumから、新規の芳香族化合物のbrefelamideを単離しており、それがアストロサイトーマ細胞に作用して、抗腫瘍作用を有することを示している。更には、D.discideumから単離した新規α-ピロノイド化合物dictyopyrone Aとdictyopyrone Bはそれ自身単独ではDIF様作用は示さないが、低濃度のDIF-1存在下には柄細胞の分化誘導を促進する作用を持つことを昨年発見した。今回はD.mucoroidesの子実体を更にスクリーニングしたところ、新規の芳香族化合4-methyl-5-n-propylbenzene-1,3-diol(MPBD)が単離されてきた。その生理作用に着目して、白血病細胞K562とHL60細胞に対する抗腫瘍作用を先ず調べた。その結果、MPBDは20-80μMの範囲の濃度で用量依存的にこれらの細胞の増殖を抑制した。次に、この物質の起源生物である細胞性粘菌に対する生理作用を調べた。イン・ビトロ培養系のテスト細胞は、D.discideumのHM44株(自分自身ではDIF-1の合成ができないので、DIF様活性を調べるのに便利)を用いた。その結果、この物質は5-20μMの濃度(DIF-1ならばnMレベルで活性の検出ができる)を添加しても柄細胞の分化の促進作用は殆ど示さなかった。
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