研究課題/領域番号 |
16590106
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
桝渕 泰宏 千葉大学, 大学院・薬学研究院, 助教授 (10209455)
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研究分担者 |
堀江 利治 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90120154)
伊藤 晃成 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 助手 (30323405)
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キーワード | 薬剤性肝障害 / ミトコンドリア / ミトコンドリア透過性遷移 / アセトアミノフェン / シクロスポリンA / 酸化ストレス / グルタチオン / シトクロムc |
研究概要 |
本研究では薬剤性肝障害におけるシグナルセンサーとしてのミトコンドリアの存在に着目し、障害初期段階でのミトコンドリアの変化とその意義を明らかにすることを目的とした。ミトコンドリア透過性遷移(MPT)はCa^<2+>濃度依存的に膜透過性を変化させる現象であり、膜電位の低下、ミトコンドリアの腫脹、マトリックスタンパク質の漏出を伴うことから、近年薬剤性肝障害との関連が指摘されている。本研究ではまずCD-1マウスのアセトアミノフェン肝障害モデルにおけるMPTの関与を検討した。MPTの特異的阻害剤であるシクロスポリンA(CsA)をアセトアミノフェンと併用することにより、組織学的、生化学的に評価した肝障害が顕著に抑制された。併用群でも単独投与群と同様に、アセトアミノフェン投与直後に肝ホモジネート中の還元型グルタチオン(GSH)の枯渇が認められたことから、CsAは活性代謝物の生成には影響しないことが示された。一方、ミトコンドリア内のGSH量は投与直後のみならず、投与8時間以降も低下が続いており、それに伴って酸化型グルタチオンの増加が認められた。このような酸化還元バランスの崩壊はCsAによって防御された。アセトアミノフェン投与群ではミトコンドリアATPの低下や細胞質へのシトクロムcの漏出が観察され、これらもCsA併用により防御された。以上の結果から、CsA感受性MPT poreの開口は、ミトコンドリア内酸化ストレスやATPの枯渇、シトクロムc漏出の発端となると考えられた。また、活性代謝物N-アセチルベンゾキノンイミン(NAPQI)を直接、単離ミトコンドリアに暴露させることによって膜電位の低下やミトコンドリア膨潤が惹起したことから、NAPQIの結合がMPTの引き金になっていると推定された。以上、代表的な肝障害モデルを用いて、ミトコンドリアが肝障害初期の重要な標的になることを明らかにした。
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