研究課題/領域番号 |
16590110
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
檜垣 和孝 岡山大学, 薬学部, 助教授 (60284080)
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研究分担者 |
木村 聰城郎 岡山大学, 薬学部, 教授 (10025710)
大河原 賢一 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助手 (30291470)
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キーワード | enteric nervous system / 粘膜下神経叢 / PepT1 / cephalexin / アドレナリン作動性神経系 / epinephrine / glycyl-sarcosine / colchicine |
研究概要 |
小腸には、中枢神経系とは独立したEnteric nervous system(ENS)が存在し、このENSが小腸の運動性や、水・電解質等の吸収を司っていることが知られている。現在、我々はENSの薬物吸収への影響について系統的な解析を進めているが、既に、アドレナリン作動性神経系の亢進により、受動拡散による薬物吸収の抑制が、コリン作動性神経系の亢進により、その促進が起こることを明らかにした。今回は、特殊輸送系を介した薬物吸収へのこれら神経系の影響を検討することを目的として、β-lactam系抗生物質などの輸送を担っていることの知られているoligopeptide transporter, PepT-1に着目し、その典型的な基質のひとつであるcephalexin(CEX)の吸収に及ぼすENSの影響を検討した。今回は、主に、筋層間神経叢を取り除き、粘膜下神経叢のみ存在するラット摘出小腸粘膜を用い検討を加えた。既に、ラットin situ吸収実験およびヒト大腸癌由来細胞Caco-2を用いたin vitro透過実験において、非選択的なアドレナリン受容体作動薬であるepinephrineがCEXの吸収を捉進させることを明らかにしていたが、本実験系においでも、epinephrineによりPepT-1を介したCEXの吸収が促進することがglycyl-sarcosineを用いた阻害実験により明らかとなった。また、α_2-受容体選択的作動薬であるclonidineにより、epinephrineと類似の効果が見られたことから、epinephrineの作用の少なくとも一部は、α_2受容体を介したものである可能性が示された。また、epinephrineによるPepT-1活性亢進の機構解析のため、細胞内で生合成されたタンパク質のtranslocationを阻害するcolchicineを作用させたところ、epinephrineによるCEX透過促進が有意に阻害された。このことから、epinephrineによるPepT-1活性亢進の少なくとも一部は、既に合成され細胞内にプールされていたPepT-1の細胞膜上へのtranslocationの促進によるものと推察できた。
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