研究課題
基盤研究(C)
薬剤性肝障害を発症することが報告されている医薬品としてアセトアミノフェン、イソニアジド、メトホルミンおよびブホルミンを取り上げ、副作用発症に関わる遺伝子群を検索した。すなわち、各薬剤により生じる肝障害時に発現量が変化する遺伝子群の抽出を目的として、各薬剤を培養肝細胞HepG2細胞に処理した時、特異的に発現変化する遺伝子群についてサブトラクティブcDNAライブラリーを作製して検索した。その結果、各薬剤処理により数種類の興味深い遺伝子発現変化が観察された。例えば、アセトアミノフェンおよびイソニアジドによるリジン水酸化酵素2(LH2)の発現上昇、アセトアミノフェンによるチミジン合成酵素の発現低下、メトホルミンおよびブホルミンによるグリセルアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼおよびNADHユビキノンオキシドレダクターゼの発現低下、βアクチン発現上昇を見出している。発現変化の観察されたこれらの遺伝子の中で、LH2はコラーゲンの架橋形成時に役割を果たすため、肝線維化発症に深く関わると考えられている。そこで、各薬剤によるLH2発現上昇機序について検討する目的で、LH2遺伝子上流を含むレポータープラスミドを構築しルシフェラ「ゼアッセイを行った結果、アセトアミノフェンおよびイソニアジドはリジン水酸化酵素2の転写活性化を引き起こすことを明らかにした。さらに両薬剤は転写因子c-mybの発現上昇を引き起こすこと、c-mybの過剰発現はLH2遺伝子の転写活性化および発現量の亢進を引き起こすことを見出した。以上の結果より、アセトアミノフェンおよびイソニアジドによるLH2の発現上昇はこれらの薬剤による肝障害の一部を説明できる可能性が考えられた。
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Biological & Pharmaceutical Bulletin 29(5)
ページ: 1006-1009
Biological & Pharmaceutical Bulletin 28(7)
ページ: 1148-1153