研究概要 |
ラット小腸-回灌流系におけるglycerolの吸収は有意な濃度依存性(飽和性)及びNa^+依存性(K^+置換による吸収率の低下)を示した.また,類似物質であるglycerol-3-phsphate, monoacetin及びdiglycerolによって有意に阻害された.したがって,glycerol及びその類似物質を基質(ないし阻害剤)として認識するNa^+依存性の2次性能動輸送系が関与しているものと考えられる.速度論解析の結果,Michaelis定数(K_m)は1.04mMと算出され,K_m値を大きく下回る低濃度域では,担体輸送が受動輸送と同等以上に寄与していることが示唆された,以上の結果は摘出反転腸管(K_m=0.77mM)での結果とほぼ同様であり,in situ腸管組織レベルにおいてglycerolに特異的なトランスポーターの存在を機能的に検証することができた. HCT-15細胞は,Na^+依存性のglycerol担体輸送機能を有するモデル培養細胞系として見出されたが,glycerol輸送のK_m値(15.0μM)はラット腸管での値(1mM程度)を大きく下回り,異なるタイプのトランスポーターの存在が示唆された.しかし,類似物質による阻害効果については,ラット腸管では明確な阻害効果を示さなかった1,2-propanediolが強い阻害効果を示したことを除いて,ラット腸管でのglycerol輸送特性とほぼ同様であった.したがって,HCT-15細胞をglycerol輸送系の基質(ないし阻害剤)の探索等の目的に利用することは可能と考えられるが,今後,各種臓器ないし細胞のglycerolトランスポーター群の機能的差異を明らかにしていくことが必要と考えられる.また,トランスポーターの分子的同定も課題であるが,mRNA抽出に有利な培養細胞(HCT-15細胞)での同定がまず期待される.
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