研究課題
基盤研究(C)
【目的】脳血管障害(脳卒中)は我が国の3大死因の1つである。高齢化社会を迎え、この疾患に罹る患者数はますます増加すると予測される。脳血管障害は、虚血の後に脳実質細胞が遅発性に死滅する特徴的な疾患である。このように虚血から細胞死に至るまでに時間がかかる理由は、グルタミン-カルシウム仮説など神経細胞死を促進するメカニズムと、神経細胞を保護するメカニズムが双方向に働くからだと言われている。さらに脳虚血時に血液脳関門(BBB)の構造および機能が変化し、脳全体の機能に影響を及ぼすと推定されているが、詳細は明らかでない。本研究では神経細胞を保護することが知られているbasic fibrablast growth factor(bFGF)に着目し、虚血時にbFGFが関わる受容体分子がどのように変動し、それが脳保護効果にどのように関連するか明らかにすることを目的とした。【方法】脳虚血動物はC57BL/6系マウスの両側頚動脈を10分間結紮することで作成した。遅発性神経細胞死は海馬CA1領域の神経細胞数の計数することで評価した。脳内FGFRs遺伝子の定量は定量的PCR法で行った。【結果および考察】本研究で作成した虚血モデルにおいて、海馬CA1領域における神経細胞数は経日的に減少し遅発性細胞死が起こっていることを確認した。一方、海馬CA1領域のFGFR1遺伝子は虚血後経時的に増加し48時間では無処置のマウスに比較し約2倍に増加した。この神経細胞保護効果とFGFR1の変動は、強力な脳保護作用があるカチオン性vasoactive intestinal peptide(cVIP)を投与した脳虚血マウスにおいてさらに増強した。これらの結果から、虚血時における脳保護メカニズムとしてFGFR1の変動が関与していることが示唆された。さらにここで用いたcVIPのin vivoにおける脳保護機構を明らかにするために、本研究ではcVIPのBBB輸送機構について検討した。その結果、cVIPは血液脳関門の塩基性ペプチド輸送系を介して脳内に移行した後、FGFR1の発現を促し、その結果として保護効果が増強されることが示唆された。
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