自己免疫疾患や腎移植の対象となる慢性腎不全患者に多い免疫抑制薬耐性発現の背景として、常在菌の一つである黄色ブドウ球菌(S.aureus)の持続感染に着目し、これら患者の末梢血単核細胞(PBMC)の免疫抑制薬感受性にスーパー抗原が与える影響を検討した。健常者8名、慢性腎不全患者5名、ネフローゼ患者8名あるいはアトピー性皮膚炎患者21名より分離したPBMCを、グルココルチコイド(GC)シクロスポリン(CyA)、あるいはタクロリムス(Tac)存在下にS.aureus由来スーパー抗原のTSST-1で刺激し、これら薬物に対するPBMCの感受性をin vitroで検討した。こうして求めたPBMCの薬物感受性を、T細胞マイトゲンのコンカナバリンA(con A)で刺激したPBMCの薬物感受性と比較し、その結果からスーパー抗原刺激によるGC耐性あるいは免疫抑制薬耐性の発現の可能性について検討した。健常者では、con Aで刺激した場合に比べ、TSST-1で刺激したPBMCの方がメチルプレドニゾロン感受性が有意に低かった(p=0.0117)。一方、その他各種疾患患者のPBMCで同様の検討を行った所、いずれの薬物においても、con Aで刺激した場合に比べ、TSST-1で刺激したPBMCの方がPBMCの応答性が有意に低下していた(p<0.044)。さらに、TSST-1で刺激したPBMCの表面マーカーの解析あるいはPBMCから産生されるサイトカインの解析も合わせて行ったが、現在T細胞の内どのような特徴をもつ細胞種が耐性に係わっているのかを特定するまでには至っていない。しかし、TSST-1で刺激したPBMCでは、GCとカルシニューリン阻害薬のいずれの効果も減弱されていることから、その耐性にはGCとカルシニューリン阻害薬に共通の分子機構が係わっているものと推察された。
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