研究課題
本研究では、自己免疫疾患あるいは腎移植の対象となる慢性腎不全患者に多い免疫抑制薬耐性発現の背景として、常在菌の一つである黄色ブドウ球菌(S.aureus)の持続感染に着目し、S.aureus由来のスーパー抗原で患者末梢血単核細胞(PBMC)を刺激した時の免疫抑制薬感受性を検討した。前年度に引き続き、慢性腎不全、腎移植、アトピー性皮膚炎、あるいはその他の自己免疫疾患など、GCや免疫抑制薬の適応となり、かつS.aureusに感染する可能性が高い疾患を対象とし、S.aureus感染と免疫抑制薬耐性との関連を検討した。免疫抑制薬存在下あるいは非存在下にスーパー抗原で刺激したPBMCの増殖率や、産生されるサイトカインの量、パターンなどを比較検討し、スーパー抗原刺激したPBMCとコンカナバリンAで刺激したPBMC間のGC感受性あるいは免疫抑制薬感受性の比較を行った。スーパー抗原刺激したPBMCは、コンカナバリンAで刺激したPBMCと比べてプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、シクロスポリン、およびタクロリムスに対する感受性が有意に低下していることを、前年度に引き続き更に症例を重ねて確認した。次に健常者および慢性腎不全患者のPBMCを用い、スーパー抗原刺激したPBMCとコンカナバリンAで刺激したPBMCの間で、培養上澄中のIL-2、4、5、10、インターフェロン(IF)γ、およびTNFα濃度を比較した。このうちIL-2濃度はスーパー抗原刺激したPBMCで有意に高かった(p<0.05)が、他のサイトカインの濃度には有意な差はなかった。そこで次に、スーパー抗原刺激したPBMCとコンカナバリンAで刺激したPBMCの間でIL-2mRNA発現量の比較検討を行ったところ、前者の方が有意に発現量が増加していた。またIL-2mRNAの細胞内消失半減期も、スーパー抗原刺激したPBMCの方が有意に長かった(p<0.05)。以上の知見から、PBMCをスーパー抗原刺激するとIL-2産生がmRNAレベルで亢進し、これがPBMCの免疫抑制薬感受性の低下に関連することを明らかとした。このように本研究ではS.aureus感染によって産生されるスーパー抗原が、IL-2mRNA発現量の増加を介して、免疫抑制薬感受性を低下させることを示唆した
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