研究概要 |
cortisolはaldosteroneと同等のMC受容体(MCR)への親和性があるが、MCRの前段階においてcortisolは11β-HSD2によりcortisoneに変換され、aldosteroneにMCとしての特異性を与えている。11β-HSD2の遺伝的変異や欠損による大幅な活性の低下が起きるとcortisol→cortisoneの変換が行われなくなり、mineralocorticoid作用が過剰に発現することになる。 cortisol-cortisoneの相互変換に関する代謝異常は、cortisolを生体に投与し、投与したcortisolの体内動態を把握することにより正確に評価できる。しかしながら、cortisolは本来生体内に存在しているため、この内因性のcortisolと区別して、投与した外因性のcortisolを測定する必要がある。本研究では、cortisol-cortisoneの相互変換に関する代謝異常機構を解析するため、安定同位体標識cortisolを投与し、投与由来と内因性cortisol,cortisoneの挙動を区別して同時に追跡し、cortisolの体内動態を正確に把握することを目的としている。 平成17年度においては、健常成人男子2名に、5mgのcortisol-[^<13>C_4,^2H_1]を経口投与し、cortisol-[^<13>C_4,^2H_1],cortisol-[^<13>C_4]およびcortisone-[^<13>C_4]の血中濃度推移と尿中排泄速度を[^<13>C_4,^2H_5]標識cortisol,cortisoneを分析の内部標準として用いるGC-MS法により内因性cortisolおよびcortisone濃度と同時に測定し、cortisolの体内動態とcortisol→cortisoneの代謝変換に関し、特に11α-位に標識された重水素の脱離を指標に速度論的解析を行い検討した。また、11β-HSD2活性を阻害することが知られているグリチルリチン摂取時にcortisol-[^<13>C_4,^2H_1]を投与し、11β-HSD2阻害時におけるコルチゾールの体内動態ならびにコルチゾール⇔コルチゾンの相互変換に関する相違を正常時と比較検討した。その結果、cortisol-[^<13>C_4,^2H_1]→cortisone-[^<13>C_4]の変換速度定数、あるいはcortisol-[^<13>C_4,^2H_1]の消失半減期が、cortisolをcortisoneに代謝変換する11β-HSD2の酵素活性評価の直接的な指標となることを明らかとした。
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