研究概要 |
まず本研究では、生理活性ペプチドのモデルとしてカルシトニンを選択し、カルシトニンにアルギニン残基を結合させたオリゴアルギニン修飾カルシトニンを合成し、その経粘膜吸収性が元の化合物に比べ高くなるか否かをin situ消化管、経肺ならびに経鼻吸収実験系により評価した。オリゴアルギニン修飾カルシトニンの合成については、ウナギカルシトニン(CT、分子量3414.9)にアルギニン残基を8個結合させたカルシトニンのL-アルギニン修飾体(R_8-CT)を合成した。その結果、小腸、大腸ならびに肺におけるR8-CTの血漿カルシウム低下作用は、未修飾体のCTに比べ、それぞれ2倍、1.4倍ならびに1.5倍増大することが認められたが、経鼻吸収ではほとんど効果はみられなかった。一方、CT含有キトサンカプセル経口投与後のCTの消化管吸収性は、CT水溶液、CT含有ゼラチンカプセルと比較して増大することが明らかとなった。また、CT含有キトサンカプセルに、吸収促進剤であるSNAP,グリココール酸ナトリウムならびにタンパク分解酵素阻害剤であるbacitracin, aprotininを併用するとCTの消化管吸収がさらに増大することが明らかとなった。以上のことから、オリゴアルギニン修飾による化学修飾ならびにキトサンカプセルによる剤形修飾法は、カルシトニンの消化管をはじめとする経粘膜吸収改善に有用な方法である可能性が示唆された。
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