骨格筋では細胞内の細胞骨格と細胞外の基底膜をつなぐために、ジストロフィン-ジストログリカン軸およびインテグリン軸が存在する。成熟骨格筋においては、インテグリン軸の分子連関は全く分かっていない。我々は形態学的解析を行い、インテグリンとジストロフィンがコロイド金の二重免疫染色で20〜40nmと近接して存在すること、神経筋接合部では培養細胞接着班に局在する多くの蛋白とも共局在することを見いだした。そこで次に免疫沈降法によりインテグリンと相互作用する蛋白を検索するとともに、ジストロフィン-ジストログリカン軸の蛋白質に注目し、両軸の分子連関の可能性についても検討した。使用した抗インテグリン抗体は、ウサギにおいて作製し、成熟した骨格筋に発現するアイソフォームであるインテグリンβ1Dを特異的に認識する。ラットより骨格筋を採取し、細胞膜を含む粗マイクロソーム分画を得た。この分画の膜タンパクの可溶化はTritonX-100、SDS、デオキシコール酸を単独または組み合わせて用いた。免疫沈降は、抗インテグリンβ1D抗体または抗ジストロフィン抗体、抗ビンキュリン抗体で行い、ウェスタンブロット法でインテグリン、ビンキュリン、アクチン、ジストロフィン、ジストログリカンの検出を行った。インテグリンで免疫沈降を行った場合、アクチンを検出できたが、ジストロフィンやジストログリカンは検出できなかった。逆にジストロフィンで沈降した場合、アクチンを検出できたが、インテグリンは検出できなかった。次にビンキュリンで沈降した場合、ジストロフィンを検出することができたが、インテグリンを検出することはできなかった。以上の結果からはインテグリンに直接作用する分子は明らかではないが、ビンキュリンが他の細胞種でインテグリンと相互作用することから、インテグリン軸とジストロフィン-ジストログリカン軸がアクチンをとおして連関する可能性が示された。
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