線毛細胞の線毛は、細胞表面の可動性の細胞質突起で、中心子と同じ構造の基底小体から伸長する。基底小体には、basal foot、ルートレット、alar sheetという基底小体附属構造が付随している。線毛細胞の形成機構を線毛発生という。基底小体の複製に重要なFGは、ルートレットの形成にも深く関与する。中心体には、100を越える分子の存在が考えられている。ゴルジ関連たんぱく質の中心体への局在について検討したところ、Golgi 58Kが中心体、特に線毛を伸長する母中心子周囲の中心子周囲物質中に強く発現していることを見出した。この局在は、ゴルジ装置の断片化、微小管などの細胞骨格系の破壊によっても保持され、また細胞分裂時にも保たれた。Golgi 58K、すなわちformiminotransferasecyclodeaminase(FTCD)は、中間代謝産物としてグルタミン酸を産生する。線毛を伸長する中心子、基底小体は、高度にグルタミン酸修飾されている。基底小体のグルタミン酸修飾におけるグルタミン酸の供給に、FTCDによる代謝過程で生産されたグルタミン酸が使用されている可能性が高い。また中心体に局在するC-Nap1、Nek2、Ran、AKAP450などの中心体関連分子と線毛発生における基底小体の複製との関係について、細胞生物学的、免疫組織化学的に解析をした。 ルートレットは、195K蛋白質、205-215K蛋白質、ルートレチンなどの分子によって構成されている。KD細胞の線毛形成におけるルートレチンの働きについて、RNAi法よるノックダウンにより解析した。ルートレチンのsiRNAの細胞内導入により、ルートレチンの発現は高率にブロックされたが、線毛形成は正常に行われた。線毛構成分子の輸送にルートレットとは別のレールが存在することが示唆された。またルートレチンsiRNAにより細胞の分裂が早期に誘導されることが示唆された。
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