研究概要 |
精巣上体は形態学的に頭部、体部、尾部に区分され、各部位ごとに特有の管腔内環境が保たれている。本研究では、精巣上体の各部位における機能的分化の分子機構を探るため、マウス精巣上体の生後発達過程における遺伝子発現変化を調べた。DNAマイクロアレイ解析の結果、生後1週から3週にかけて遺伝子発現が大きく変化し、3週でほぼ成熟の域に達することが明らかになった。またそれらの遺伝子発現は、精巣上体の頭、体、尾において大きく異なることが明らかになった。 次に、性ホルモンが精巣上体の生後発達にどのように作用するかを調べるため、雄マウス新生児を合成女性ホルモンdiethylstilbestrolに曝露した。その結果、精巣上体の間質の相対的増加とType I collagen遺伝子(colla1,colla2)の発現上昇が確認され、過剰なエストロゲンによる相対的間質増加は、個々の間質細胞におけるcolla1およびcolla2の発現上昇と関係が深いと考えられた。 さらにDNAマイクロアレイおよびリアルタイムRT-PCRにより、精巣上体で強くあるいは特異的に発現する新規の遺伝子1種(Serpina1f)、および精巣上体での機能が不明な4種の遺伝子(Lcp1,Cuzd1,Teddm1,Wfdc16)を同定し、これらの発現が思春期の頃に急増することを確かめた。また精巣上体におけるそれらの発現部位、ホルモンによる発現制御パターンを明らかにし、DES曝露により発現が低下することを明らかにした。また水チャネル蛋白質アクアポリン(AQP)の発現を解析した。マウス精巣上体ではAQp1-9およびAQp11の10種類が発現しており、エストロゲンの過剰により多くのAQPの発現が低下することが明らかになった。
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