研究概要 |
本年度は,マウス胚(E12.5〜17.5)を6〜12時間ごとに取り出し,骨盤領域を取り出し,パラフィンブロックに包埋,矢状断連続切片を作製,観察した.この目的は,まず肛門直腸管形成時においてprogrammed cell deathがどのような空間的時間的分布を示すのかを明らかにすること,そして,その構造的な変化を詳細に観察することであった.肛門直腸管が,初期には屈曲した形なのが,次第に直線状になっていく過程があきらかになり,さまざまな過程でprogrammed cell deathが関与していることも明らかにした.骨盤内の骨格筋の発生についても兎疫染色により観察を行った.その結果,外肛門括約筋の発生部位が,一時的に形成された肛門直腸管の下端ではなくて,固有尾部の腹側部に現れることが明らかになった.発生中に,生殖結節は腹尾側に伸長し,そのときに総排泄腔膜も同時に腹尾側へと移動する.従来,肛門括約筋は,総排泄腔周囲の筋が肛門管周囲と会陰部とに分離することによって形成されるとされてきた.しかし,外肛門括約筋は,肛門部下端に見られる櫛状線の尾側にあるにもかかわらず,従来の説明では同筋は,櫛状線の頭側に位置してしまう.今回の結果,総排泄腔開口部よりも遠位に括約筋が形成され,それによって肛門管が形成され,外胚葉由来の総排泄腔周囲の上皮が肛門管に取り込まれる過程が明らかになった.肉眼解剖学レベルで考えられてきた陰部神経の経過,分布,神経支配などの所見を裏付けるものであることがわかった.現在,これらの筋群の形態と発生について時間を追ってさらに観察を進め,論文準備中である.
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