まず、今回の研究費を用いて、動物レクチンVIP36の細胞質側や内腔面側の各所における特異的な抗体を作製した。そのうち糖鎖認識部位のドメイン、同類の豆型レクチンのうちERGIC53やVIPLとは全く基本構造が異なるVIP36に特異的な内腔面配列部位のドメイン、細胞質側ドメインの3種の異なる抗体が得られた。生化学的手法によって、これらの抗体は、ERGIC53やVIPLとは全く交差しない特異性の高いものであることを確認した。我々は、これらの抗体による電子顕微鏡や光学顕微鏡の免疫細胞化学法を用いて、VIP36が上皮細胞のみならず、神経細胞を含む各種細胞に分布していることを見つけた。特に、神経細胞などにおいて、この形態学的手法から明らかにされたVIP36の分布は、決して小胞体領域にとどまるものでなく、ゴルジ装置や細胞膜にも多数のVIP36の分布が認められた。また、シュークロース濃度勾配法による細胞小器官分画法によっても、形態学的なVIP36の分布は、ゴルジ装置のみならず、細胞膜までにも分布されていることが確認された。非常に興味深いことに、VIP36の各部位に特異的なドメインの抗体は、各種細胞における染色性の違いを認めた。これらの抗体とGFP-融合VIP36との二重染色から、動物レクチンVIP36の細胞内における分布変化を動態として観察することができた。細胞質側には高々数個のアミノ酸部分しかない。しかし、この細胞質内では、VIP36が予想以上に速い速度で移動していることを観察した。VIP36分子の細胞質内におけるこの早い移動に関して、VIP36の細胞質ドメインが、アネキシンなどの蛋白を介して、アクチン分子と結合しているのかもしれないことを強く予想させるデータを得た。しかし、移動速度の点でアクチンフィラメントのみとするのには、今までの各種の報告とに矛盾する点も多く、さらに研究を進める必要性があることが確認された。
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