まず、VIP36に特異的なモノクロナル抗体を作製した。動物レクチンVIP36は1回膜貫通蛋白であり、腔内に2箇所と細胞質側に1箇所の、抗原性の高い部位が存在する。この3箇所の合成ペプチドをそれぞれ抗原として、さらに、VIP36のDNAを強制発現した大腸菌から得られた(フォールディングされていない)VIP36の計4種を抗原として免疫を繰り返し、結果として97種のモノクロナル抗体を得た。そのうち19種のVIP36に対する抗体は、特異性がきわめて高く、ウェスタンブロット上、他にバンドが見られず、VIPLとの交差性はなかった。信頼性が高いこれらの抗体は、それぞれ、糖鎖がついたVIP36とつかないVIP36を分離染め分けするものや、ある程度の電子顕微鏡用の固定に対応できるもの、VIP36の分子の糖鎖結合ドメインを認識するもの、他の2箇所の異なる内腔面ドメインを認識するもの、細胞質側のドメインを認識するもの、フォールディングされる前のVIP36のみを認識するものに分類できた。これらの抗体を用いて、細胞がERにおいて高マンノース糖鎖のついた分泌ホルモンを合成、VIP36による選別、シスゴルジからトランスゴルジとVIP36とともに移動し、このゴルジ装置通過の過程において、分泌顆粒を形成、さらに細胞膜近傍領域にまで輸送した後、エクソサイトーシスされるという一連の分泌過程におけるVIP36の変化を、電子顕微鏡と共焦点レーザー蛍光顕微鏡を用いて観察できるようになった。この過程では、細胞骨格成分のうち、特に、アクチンフィラメントに大きな変化が認められた。エクソサイトーシス〜エンドサイトーシスにて、細胞膜の回収に取り込むや否や、急激に、その細胞膜近傍領域の細胞膜裏打ち構造とその周辺の細胞質のフィラメント構造に変化が起こった。同時に、動物レクチンVIP36の集積が、極めて迅速に、この部位の細胞膜部位に新たに明瞭に出現し、確固としたネットワーク構造に支えられたVIP36陽性膜ドメインを再構築することがわかった。
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