動物レクチンVIP36の各ドメインに対するポリクロナル並びにモノクロナル抗体を作成し、それらを用いて次の(1)〜(3)を明らかにした。 (1)細胞のゴルジ装置には二種のVIP36が存在している。 粗面小胞体からシスゴルジの細胞分画において単量体を形成するVIP36の一部は、シスゴルジ装置以降においては二量体、三量体、四量体を形成することがわかった。一方で、ゴルジ装置には、単量体の状態で存在するVIP36があり、それらは、各ドメインの特異的部位を認識する抗体で分離することができた。単量体で存在するVIP36は、糖鎖に対する親和性が弱かった。ゴルジ装置における二種VIP36の存在は、ゴルジ装置において、VIP36が輸送蛋白質や輸送脂質の品質管理を行なっていることを強く示唆する結果となった。 (2)エンドソームにVIP36が存在している。 VIP36はERGIC-53やVIPLとは分布が異なることがわかった。特に、細胞外に投与したカチオン化フェリチン、SLT-1と共存するエンドソームが認められたことから、特に、糖脂質ラフト並びにレセプターを介さないエンドサイトーシスルートに沿って、細胞内に取り込まれていることを強く示唆する結果となった。これらの結果は、VIP36が粗面小胞体からシスゴルジの間を行き来しているだけでなく、ゴルジ装置を越え、細胞のポストゴルジにおける蛋白質並びに脂質輸送の役割をしていることを強く示唆する結果となった。 (3)VIP36測定法の確立。 異なるドメインに対する抗体を組み合わせ、界面活性剤を工夫することで、細胞や組織におけるVIP36のELISA定量法を確立した。この定量法により、細胞の機能状態において、VIP36が大きく変動することを見い出した。これらの結果は、VIP36が糖蛋白質、糖脂質の選別輸送の機能状態にあわせ、量的に変動していることを強く示唆する結果となった。
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