研究概要 |
プロテイン4.1ファミリー蛋白は4種類(4.1R、4.1G、4.1N,4.1B)の遺伝子からなるが、我々は各々の特異抗体を用いて、ゲッ歯類およびヒトの種々臓器における免疫組織化学的局在を明らかにし、それらの役割について検討した。成獣もしくは出生直後のマウスおよびラット(ゲッ歯類)臓器を灌流固定後、凍結切片を作製して、4.1B,4.1Gおよび4.1Nに特異的なウサギポリクローナル抗体を用いて、光顕もしくは電顕免疫組織化学的検索を行った。一部のヒト試料(承諾を得た病理標本)について、ヒト4.1Bに対応するDAL-1蛋白に対する抗体を用いた。4.1Bはゲッ歯類・ヒト小腸・大腸上皮基底側面に局在、この免疫染色性はマウス腫瘍モデル・ヒト大腸腫瘍で不明瞭となった。ゲッ歯類膵臓では、ラ氏島内分泌細胞に局在、腫瘍モデルマウスでの免疫染色性は消失した。ゲッ歯類・ヒト腎臓では、近位尿細管上皮基底側面に局在、ヒト腎腫瘍で免疫染色性は著減した。さらにゲッ歯類・ヒト精細管基底区画のセルトリ細胞膜直下に、マウス胸腺では、胸腺上皮細胞膜直下に局在した。4.1Gは、ゲッ歯類精巣セルトリ細胞に局在、カドミウム投与マウスで免疫染色性は著減した。またゲッ歯類中枢神経系マイクログリアの細胞体・突起に局在した。4.1Nは、ゲッ歯類骨格筋T細管の筋形質膜直下に局在した。以上のように、ヒト赤血球膜で発見された膜骨格蛋白であるプロテイン4.1ファミリーは、種々の動物臓器において、特異的な局在をもつことが明らかとなった。4.1ファミリーを含む膜骨格蛋白複合体ネットワークが、各臓器形成時の細胞分化に伴い、膜蛋白局在の決定、細胞相互接着さらには細胞サイズの規定などの役割をする可能性がある。現在さらに、本研究で明らかにした4.1ファミリー蛋白の局在部位において、それらとの結合蛋白同定とその機能解析を進めている。
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