研究課題/領域番号 |
16590149
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
小畑 秀一 北里大学, 一般教育部, 講師 (10204273)
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研究分担者 |
尾野 道男 横浜市立大学, 医学部, 助手 (50264601)
澤田 元 横浜市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (90101112)
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キーワード | 両生類胚 / 初期発生 / 形態形成 / 原腸胚形成 / 細胞骨格 / アクチン / 微小管 |
研究概要 |
原腸胚形成は体軸の決定、中胚葉細胞形成開始、胚葉間相互作用による細胞分化などと深く関わるため、多細胞動物体の形態形成にとって重要な過程である。しかしながら、現代においても、そのメカニズムはほとんど明らかになっていない。本研究では、原腸胚形成に必須の過程である原腸陥入の仕組みについて、細胞の形態変化および細胞骨格の役割についてイモリ胚を用いて調べた。 イモリの初期原腸胚を化学固定した後、様々な向きで割断し、予定中胚葉細胞、予定内胚葉細胞および予定外胚葉細胞の形態を観察したところ、原腸を構成する細胞、すなわち陥入した細胞および原腸近傍に位置する予定内胚葉細胞の多くが細長く伸張していることが明らかになった。これまでは、このような細胞の伸張は原腸先端部に位置するブラスコ細胞において特徴的に見られる現象であるとされていたが、イモリという有尾両生類胚を用いることにより、これらの細胞の挙動を細胞伸張という視点から統一的に扱うことが可能であることが分かった。これらの細胞に見られる細胞伸張という現象が自律的な現象であるのか受動的な現象であるのかを明らかにする目的で、初期原腸胚から予定中胚様細胞と予定内胚葉細胞を切り出し、個々の細胞に単離した後、タイムラプス顕微鏡で間欠記録撮影した。バラバラに解離された細胞においても、細胞伸張が観察されたことから、この伸張運動はこの時期の細胞に備わった自律的運動であることが分かった。伸張運動をさらに詳細に調べると、細胞表面において細胞の長軸と直行する向きで細かい波打が複数箇所において観察された。細胞伸張運動および波打運動はアクチン重合阻害剤であるサイトカラシンによって完全に阻害されたが、微小管重合阻害剤であるノコダゾールでは全く阻害されなかった。また、解離胚細胞をローダミンファロイジンで染色し、落斜蛍光顕微鏡で観察したところ、細胞の長軸に直行する向きに太いアクチン線維が複数配向していることが明らかになった。これらの結果はこの運動がアクトミオシン系によって引き起こされていることを強く示唆している。イノシトール3リン酸受容体の局在を調べた前年度の結果を踏まえ、この細胞伸張運動と細胞内カルシウムイオンとの関係を明らかにすることが今後の重要な課題である。
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