Sox(Sry[精巣決定遺伝子]related HMG Box)遺伝子は、1990年に精巣決定遺伝子(Sry)が単離されて以降、HMG boxと呼ばれるDNA結合ドメインにhomologyを有する遺伝子群として分類され、ヒト、マウスでは、既に20数種類が同定されている。多くのSox遺伝子は、胚発生過程において組織特異的に発現しており、様々な細胞の分化の運命決定に重要な役割を担っている。zebrafishの大規模な変異体スクリーニングやXenopusの解析結果から、私達の単離したSox17の相同遺伝子が、魚類、両生類において内胚葉形成に必須な因子であるという事実が明らかになってきた。しかし、鳥類、哺乳類などの高等脊椎動物における内胚葉決定因子が存在するのかどうかは、今まで不明であった。本研究課題では腸管形成の初期分化の遺伝子発現、及びそれに関連した形態形成の全体像を明らかにすることを目指した。Sox17欠損胚では、予定前腸領域の内胚葉細胞は、head-fold stageまで正常に発生した後、初期体節形成期までに過度のアポトーシスにより欠損し、中、後腸の内胚葉細胞は、head-hold stageまでに既にその分化が抑制され特に膵臓原基(Pdx-1陽性)は全く欠損している。但し、Hex1陽性を示す肝臓原基は、背側、腹側ともに正常に発生している。Sox17欠損胚は10.5日齢には胎生致死であるため、その後の腸管原基から肝臓への分化、及び細胞維持が正常であるかどうかは検討し難い。そこで胎子由来の内胚葉分化能を観察する為に胎子内胚葉、肝臓原基から肝細胞への組織培養系を作成し、その後のステージにおけるSox17因子の影響を検討した。具体的には、胎生致死以前の9.5日Sox17欠損胚から、肝臓原基を単離し、0.45μmミリポアフィルター上で、48-72時間12-24穴プレート内で器官培養を行う。培養後のサンプルは常法に従い、EM包埋を行い、厚切り、薄切切片の観察を行う。またwhole mount in situ hybridization法によってα-fetoprotein等の分化マーカーを用いて、細胞分化が正常に行われているかどうかを観察した。
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