角膜では糖尿病に伴い点状角膜上皮症や再発性角膜びらんなどの合併症が起こることが知られている。このような角膜障害に伴い、基底膜を含めた細胞外マトリックスの構成成分がどのように変化するかは未だほとんど解明されていない。そこで本研究では、糖尿病角膜における細胞外マトリックスの変化を免疫組織化学的に検討した。 糖尿病GKラット角膜と正常Wistarラット角膜(15、33、62週齢、雄)を用い、糖尿病に伴う基底膜や角膜固有質での形態変化を電子顕微鏡にて観察したところ、GKラット角膜ではこれまでヒトで報告されているような基底膜の肥厚は認められなかったが、上皮基底細胞からの基底膜の剥離が観察された。またデスメ膜ではlong spacing collagenが正常な角膜に比べて、加齢に伴い顕著に増加することが観察された。さらに細胞外マトリックスの構成成分に対する抗体を用いて免疫電顕にて局在を検討したところ、IV、VI型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ヘパラン硫酸プロテオグリカンの局在にはほとんど変化が認められなかった。一方、VIII型コラーゲンは、正常な角膜ではデスメ膜全体にほぼ均一に分布するのに対し、GKラットではデスメ膜全体に分布すると同時に、特にlong spacing collagenに局在していることが明らかになった。
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