近年、エストロゲン作用後に短時間で起こる種々の非ゲノミックな現象が、膜結合エストロゲン受容体(M-ER)を介して引き起こされていることが示唆されているが、M-ERの実体や局在は不明である。本研究では免疫電顕法を用いて、マウス子宮上皮細胞と培養細胞(MCF-7ヒト乳癌細胞)におけるM-ERの局在の検索を試みた。同時に膜結合キナーゼである上皮成長因子受容体(EGFR)との共存の有無を検索した。 1)M-ERの局在 去勢した成熟雌マウスに17β-estradiol (E2)を投与し、5分、10分、20分後に子宮を摘出した。組織は25mM塩化カルシウムを含むホルムアルデヒドで固定後、Lowicryl-K4M樹脂に包埋した。MCF-7はフェノールレッド不含培地で培養し、E2添加後、2分、5分、10分、15分後に同固定液で固定後、Lowicryl-K4Mに包埋した。超薄切片を作成し、2種類の抗エストロゲン受容体α(ERα)を1次抗体として用いて、金コロイド標識抗体法でM-ERを検出した。一部の切片はトリス塩酸緩衝液(pH9.0)中で加熱し、抗原の賦活化を行った。 マウス子宮上皮では、陽性反応は核内の分散したクロマチン上に認められたが、細胞膜上は反応陰性であった。MCF-7細胞でのERαの局在は多様であり、核内の反応に加え一部の細胞では、細胞質や細胞膜に反応陽性が認められた。ERαの局在の多様性は、細胞周期の不均一性に基づいている可能性が示唆される。E2刺激による、ERαの細胞内移動は確認できなかった。 2)EFGRの局在 マウス子宮上皮とMCF-7において局在を免疫電顕法で検索した。EFGRは子宮上皮では管腔側の細胞膜上、MCF-7においても細胞膜上のカベオラと思われる部位に局在した。現在MCF-7細胞において、二重染色法を用いて、ERαとEFGRが共存するか否かを検索中である。
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