テトラサイクリン遺伝子発現誘導系(Tet-OffあるいはTet-Onシステム)などの遺伝子発現調節技術を用いて、タイトジャンクション(TJ)構造の新規構築や再構築の過程を検証することにより、上皮細胞の極性形成における細胞間接着装置の関わりについても明らかにする目的で、本年度ほ以下あ実験を行った。 まず、Tet-Offシステムを用いて、クローディン-3の発現調整可能な培養L型繊維芽細胞あるいは培養MDCK細胞を作製した。次いで、この細胞を用い、テトラサイクリンやその誘導体ドキシサイクリンを添加することによりクローディン-3分子の発現をコントロールして、TJの形成過程や消退過程を蛍光顕微鏡法や凍結割断免疫標識レプリカ電子顕微鏡法で形態学的に観察した。その結果、テトラサイクリンやドキシサイクリンによる発現調整により、クローディン-3は細胞膜に発現してTJ部位に濃縮しており、Tet-Offにより消退することが確認された。しかし、細胞により分子の発現や消退が不均一で、統一性をもってTJの構築・再構築を明らかにするには至らなかった。引き続き、細胞のリクローニングを行い、反応が均一な細胞群を構築中である。さらに、Tet-OnおよびTet-Offシステムで調節可能なGFP標識クローディン発現培養細胞も作製し、TJの形成・消退過程を共焦点レーザー顕微鏡により動的観察し、クローディン分子の発現、TJへの組み込み、あるいはTJからの離脱について検討している。
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