老化促進マウスのSAMP10とklotho変異マウス、さらに脳卒中易発症性高血圧ラット(SHRSP)を用いて、中枢神経系の神経細胞、特にその軸索の変性に注目して形態学的生化学的に解析し、老化促進マウス及び脳卒中の発症頻度が高くなる生後半年以降のSHRSPでは軸索のニューロフィラメント(NF)、ライソソームなどの細胞小器官の蓄積による軸索の膨化が目立ち、変性像を示すことがわかった。赤ワインポリフェノールが老化及び老化関連疾患にどのような影響を与えるか、赤ワイン、日本酒及び純粋のエタノール(すべてエタノール濃度は14%)投与で比較した結果、有意に赤ワインが細胞老化像と類似した神経変性像の出現を遅延させることがわかった。他のポリフェノール類のウコンをエタノールに混入し投与した場合でもアルコールの細胞障害作用の有意な緩和がみられ、抗酸化作用を有するポリフェノールの細胞老化及び老化関連細胞障害に対する抑制効果が細胞レベルで初めてわかった。klotho変異マウスは約2ヶ月の寿命のため、老化症状を示すかどうか明確でなかったが、klotho遺伝子の過剰発現で有意に寿命が延びることが示されたので、このマウスの中枢神経細胞の性質を老化と対応させて詳細に解析した。ニューロン及びグリア細胞発現蛋白質の中で、老化に伴い発現が増加する細胞骨格系、ライソソームプロテアーゼ、オートファジー関連蛋白質及び細胞死促進蛋白質の増加し、さらに老化で発現が減少する微小管関連蛋白質、シナプス小胞関連蛋白質、細胞死抑制蛋白質及び細胞分裂関連リン酸化酵素は減少することがわかった。形態学的にも神経細胞での細胞骨格系の変化、ライソソームの分布密度の増加及びシナプス関連構造の減少がみられ、また星状膠細胞ではグリアフィラメントの増加がみられ、この変異マウスが細胞レベルで老化の特徴を示すことがわかった。
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