研究概要 |
脾洞は静脈性毛細血管であるが、通常の毛細血管とは著しく形態が異なる。通常の毛細血管の内皮細胞は扁平で核の部分が厚くもりあがり血管の長軸方向にやや長く伸びた形をしているが、脾洞の内皮細胞は長い紡錘形をしており秤状内皮細胞と呼ばれている。秤状内皮細胞は脾洞の縦軸方向に互いに平行に並び、その外側では内皮細胞の方向とほぼ直交するタガ線維に束ねられている。内皮細胞の隙間は脾臓の充血の程度、杵状内皮細胞の収縮や変形により変動すると考えられているが、内皮細胞のCa^<2+>動態とstress fiberの収縮、形態変化に伴う細胞間接着装置の動態については解明されていない。 本研究では、細胞内Ca^<2+>貯蔵庫から細胞質へのCa^<2+>放出に関わるものとして、脾洞内皮細胞の小胞体には誘導性放Ca^<2+>出系のIP_3R1型とCa^<2+>誘導性Ca^<2+>放出系のRyRがあるので、RyRを1型、2型、3型を同定し局在を調べ、3型の局在を明らかにした。加えて、内皮細胞には容量依存性Ca-channelのTRPC1 channelが存在していると報告されているので、これについても局在を明らかにし、RyR-3,IP3R, VE-adheren junctionとの関係を示した。細胞間接着装置は主に、tight junction、adherens junction, desmosome, gap junctionの4種類に分けられる。凍結割断レプリカ法で脾洞の内皮細胞を調べた結果、通常の内皮細胞とは異なり、細胞側面の基底側に1-2本のストランドからなるtight junctionが観察された。本研究では、adherens junctionの分布について検索した。内皮細胞のadherens junctionを構成するもつとも主要な膜貫通型タンパクはVE-cadherinである。β-cateninはcadherinの細胞質ドメインに結合し、さらにα-cateninを介してアクチンフィラメントと結合するとされている。VE-cadherinとβ-cateninの秤状内皮細胞における局在を組織細胞化学的に調べた結果、杆状内皮細胞間の側面にVE-cadherinとβ-cateninの局在が観察された。また、これらの抗体によるラベルは細胞側面で斑状に共局在していることが解った。
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