研究課題
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)のユニークな生理活性としてS1P受容体サブタイプ依存的な二方向性細胞運動制御が挙げられる。我々は、S1P受容体の中でS1P_1とS1P_3はともにRacの活性を促進して化学遊走を誘導するが、逆に、S1P2は化学走化因子によるRac活性化を抑制して化学遊走を抑制すること、さらにS1P_2によるRac抑制はG_<12/13>-Rho情報伝達経路を介することを明らかにしてきた。本年度では細胞遊走の抑制を来すRacの抑制が、Rhoのどのエフェクターを介して引き起こされるのかRNA干渉法を用いて同定を試みた。PKN1、PKN2、CRIK、mDia1、RhotekinのsiRNAのCHO細胞への導入により各Rhoエフェクターの蛋白質発現量が特異的に抑制されることをウエスタンブロット法で確認した。mDialsiRNAの細胞内導入はS1Pによるストレスファイバー形成を阻害した。しかしながら、上記siRNA各種を細胞内導入してもinsulin-like growth factor I(IGF-I)による細胞遊走、およびS1P_2受容体を介したS1Pによる細胞遊走抑制には影響を与えなかった。また、Rhoキナーゼ阻害剤はS1Pによるストレスファイバー形成を抑制したが、S1P細胞遊走およびラッフル膜形成の抑制には影響しなかった。S1P_2受容体によるRac活性・細胞遊走の抑制には、Rhoの活性化が必須である。RhoによるRacの抑制機序として、神経細胞やある種のリンパ細胞では、RhoエフェクターであるRhoキナーゼの関与が示されているが、私達の実験系(CHO細胞)では、Rhoキナーゼ阻害薬は無効であった。さらに、Rhoキナーゼ以外のRhoエフェクターのsiRNAの細胞内導入で特異的に該当蛋白質の発現量を抑制しても、S1P_2受容体を介した細胞遊走抑制は阻害されなかった。これらの結果から、RhoによるRac活性の抑制が、未知のRhoエフェクターによるものか、エフェクターを介さずにRhoの直接の作用によるものか、また、既知のRhoエフェクターが複数関与するのか、等の可能性が考えられた。
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