心筋細胞膜とCa^<2+>ストアの小胞体膜とは、ジャンクトフィリンという小胞体蛋白を介して近接する結合膜構造を形作る。本計画では、その結合膜構造の興奮収縮連関における役割を解明することを目的とした。ジャンクトフィリン蛋白や別の小胞体蛋白であるリアノジン受容体を欠損させたマウスの心筋細胞は、結合膜構造と筋収縮に異常をきたすので、これらの欠損マウスを実験動物として用いた。 具体的には、以下の実験を行った。(1)単一心筋細胞のジャンクトフィリン欠損時におこる不規則な筋収縮の特徴を明らかにした。(2)ジャンクトフィリンを欠損した場合の心月細胞における異常収縮は、活動電位の変化で説明された。(3)異常収縮は、細胞外からCa^<2+>流入によって生じていた。(4)ジャンクトフィリン欠損時の異常収縮時には、細胞を旋回するCa^<2+>waveが認められた。(5)L型Ca^<2+>チャネルとリアノジン受容体のカップル効率は、ジャンクトフィリン蛋白を欠損させると低下していた。(6)ジャンクトフィリンやリアノジン受容体を欠損した動物では、心電図を含む循環器パラメータが特徴的に変化していた。 本実験計画遂行により、興奮収縮連関における細胞内Ca^<2+>ストアと細胞膜間の結合膜構造の果たす生理学的役割がある程度明らかになったと考えられる。今後とも、心筋細胞における結合膜構造蛋白の欠損による異常収縮に注目しながら、その主因となるイオン機構について、更に詳細に検討してゆく予定である。
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