研究概要 |
体内時計機構2振動体説は,(1)Evening(E)振動体とMorning(M)振動体,(2)視交叉上核(SCN)振動体と制限給餌周期(restricted feeding, RF)同調振動体(RF振動体),(3)SCN振動体とメトアンフェタミン(MAP)依存振動体(MAP振動体)のそれぞれから考えられてきた.本課題では,行動リズムがスプリッティングを示すCS系マウスを用いて,E/M振動体とRF振動体・MAP振動体との関連性について明らかにすることを目的とし以下の結果を得た. 1.CS系の行動リズム・スプリッティング条件を確立するため,6時間暗期を1日に2回行う明暗サイクル(LD6:6:6:6およびLD9:6:3:6)と暗期の長い明暗サイクル(LD9:15)を行ったが,これらの条件下ではスプリッティングは起こらなかった.CS系のスプリッティングは恒暗条件でのみ生じることが分かった. 2.恒暗条件でRFを行ったところ,CS系マウスの行動リズムがRFに同調した.RF下でのSCN時計遺伝子(mPer1など)発現リズムは,RFに同調していた.これらの結果から,CS系マウスのSCN振動体はRFに同調することがわかった.またRF中およびRF後のリズムがスプリッティングしなかったことから,E/M振動体とRF振動体に何らかの関連がある可能性が考えられた. 3.恒暗条件におけるCS系のスプリッティングリズムヘのMAP(0.01%)投与の影響をみたところ,投与前のスプリッティングリズムの延長成分に加えて,周期が長い成分が出現した.また,MAP投与後のフリーランリズムは,投与前のフリーランの延長線上から開始していた.さらに,MAP投与後は,スプリッティングリズムの2成分のうちM成分が消失した.これらの結果から,E/M振動体とMAP振動体との関連性はないが,M振動体がMAPに影響を受ける可能性が考えられた.
|