研究概要 |
GnRHニューロンに発現する膜電位依存性イオンチャネルとGABA_A受容体機能を解析した。性成熟後のGnRH-EGFPトランスジェニックラットから麻酔下に脳を取り出し、酵素処理で分散し、カバーグラス上で短期培養(1日以内)し、実験に供した。EGFP蛍光を指標にGnRHニューロンを同定し、穿孔パッチクランプ法で膜電位・膜電流を記録した。まず膜電位依存性カルシウム電流を解析した。その結果、L-,N-,P/Q-,R-およびT-型の電流が認められ、R-型が全カルシウム電流の30%を占め、L-型が25%、N-型が20%、P/Q-型が12%、T-型が13%であった。この発現比率は幼弱ラットのとは異なるが、思春期ラットで認められたものとほぼ同じであった。以上からラットGnRHニューロンにおけるカルシウム電流の発現パターンは発達段階で異なり、思春期で完了すると考えられる。つぎにカルシウム活性型カリウム電流を解析した。その結果、減衰過程の長い緩徐後過分極電流が認められ、SKチャネルの阻害剤であるアパミンで強力に抑制されることがわかった。さらにGnRHニューロンの放電過程を解析した結果、この緩徐後過分極電流は、比較的強い脱分極性の刺激にたいして、持続的な放電を維持するのに不可欠であることが判明した(Kato et al.,2005,日本神経科学学会大会;Kato et al.,2006投稿中)。最後に、GABA作用について、カルシウムイメージングで解析した。その結果、GABAはGABA_A受容体に作用し、50%以上のGnRHニューロンで細胞内カルシウム濃度を上昇した。この反応は細胞外カルシウムの除去で完全に消失し、また塩化物イオン(chloride ion)輸送体NKCC1の阻害で反応が減少することから、GABAはGnRHニューロンに発現するGABA_A受容体を介して細胞を脱分極し、膜電位依存性カルシウムチャネルを活性化し、カルシウムイオンの流入を引き起こすと考えられる(Tanaka et al.,2006,国際神経内分泌学会で発表予定;Watanabe et al.,2006論文準備中)。なお、上記膜電流には雌雄差および性周期による変化は認められなかった。
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