研究概要 |
1.突然死、ポックリ病の原因と疑われている「Brugada症候群」の薬理学的不整脈モデルを、イヌ摘出血液灌流右心室自由壁標本にKチャネルオープナーであるピナシジルとNaチャネルブロッカーであるピルジカイニドで灌流して作製した。このモデルでは、V1〜V2誘導心電図で特徴的なサドルバック型、コーブド型のST変化が惹起できた。コーブド型ST変化時に発生した心室細動では興奮伝播様式が心内膜側と心外膜側で異なり、機能的ブロックを伴い両側間を回帰するリエントリーが機序として考えられ、心内膜側と心外膜側の間に機能的ブロックを起こす細胞群(M細胞)の存在が示唆された。(Circulation,2004) 今回、右心室自由壁標本の心内膜と心外膜の中間の心室筋層にM細胞活動電位測定用電極を刺入し、単相活動電位を記録したところ、活動電位持続時間が心内膜側および心外膜側心室筋よりも長い心室筋の存在が確認されたが、ピナシジルおよびピルジカイニドで心室細動を惹起させても、機能的ブロックを伴い両側間を回帰するリエントリーを機序とする興奮伝播様式は観察されなかった。現在詳細に結果を解析中である。 2.イヌ持続性心房細動モデルを高頻度ペーシングにより作製し、電気的および構造的リモデリングの心房細動(Af)の維持における重要性及びこれらのリモデリングに対するIII群抗不整脈薬アミオダロンの効果を検討した。Af群では活動電位持続時間の短縮、周期依存性の消失、伝導速度の低下などの電気的リモデリングが観察され、容易にAfが誘発されたが、Af+アミオダロン投与群では電気的リモデリングが抑制され、持続性Afは誘発されず、構造的リモデリングの指標であるmatrix metalloproteinase(MMP)活性は、Af群で増加し、Af+アミオダロン投与群ではAf群に比較して優位に低下していた。アミオダロンは電気的リモデリングだけでなく構造的リモデリングも抑制し、Afの再発予防に関与している可能性が示唆された。
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