研究概要 |
1,腎虚血-再灌流障害惹起ラットでの、亜硝酸由来NO産生の検討 亜硝酸ナトリウム(NaNO_2)を0.3および3μmol/kgの割合でSD系雄性ラットに静脈内投与し、投与終了後40分間腎動静脈を阻血して再灌流0,1、5,および30分後の腎臓中および血中のNO濃度を電子スピン共鳴法にて測定した。そうしたところ、腎臓では虚血によって投与した亜硝酸由来のNOが生成し、その生成は濃度依存的であった。虚血中に腎臓で生成したNOは再灌流によって速やかに腎臓中から循環血中に拡散していくことを確認した。 2,腎虚血再灌流時の亜硝酸由来NO産生に対する、生体内還元酵素の影響の検討 SD系雄性ラットにキサンチンオキシダーゼの阻害剤であるallopurinolを4mg/kgの割合で静脈内投与した後、亜硝酸(3μmol/kg)を静脈内投与し、腎虚血(40min)時のNO濃度の変化を検討した。その結果、allopurinolの処置により虚血腎中のNO生成は抑制されたことから、in vivoの系でも虚血時にキサンチンオキシダーゼが亜硝酸からのNO産生に関与していることが示唆された。一方、NO合成酵素阻害剤であるL-NAMEを前処置(1g/L飲水)したラットでは、このような亜硝酸由来NO生成に対する抑制効果は観察されなかった。 3,腎障害時の、亜硝酸による腎保護作用の検討 13週齢のSD雄性ラットにNaNO_2(100mg/L、1000mg/L)を飲水中にL-NAME(1g/L)と同時に3週間添加したところ、L-NAME単独投与で観察された血圧の上昇が亜硝酸1000mg/L添加によって有意に抑制され、同時に腎の糸球体虚血変性ならびにタンパク凝集も改善した。また、血中HbNO濃度を測定したところ、血圧の降下に伴って、L-NAMEで有意に低下した血中HbNO濃度が、亜硝酸の経口投与によって濃度依存的に改善した。
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