研究課題
炎症組織におけるプリン受容体情報伝達系の役割を調べるために、炎症の初期反応に関与する血管内皮細胞ならび炎症後期の組織修復に関わる線維芽細胞を用いて、炎症性サイトカインの作用を検討した。血管内皮細胞になど種々の炎症性サイトカインを作用させた時を作用させると、インターフェロン(IFN)-γ処理細胞において、ATPによる細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]i)上昇反応の著明な亢進が認められた。このIFN-γの作用は内皮細胞P2X_4受容体の発現亢進の結果出ることが判明した。また、IFN-γは内皮細胞の主要な細胞外ATP分解酵素であるNucleotide triphosphate diphosphatase (NTPD)1の発現を低下させ、ATP分解を抑制することが明らかになった。以上のIFN-γの作用は他の炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン(IL)1-βやTNF-αの存在下で著しく亢進した。これらの結果から炎症巣の血管では、ATPを介する循環制御機構が亢進している可能性が示唆された。一方、マウス線維芽細胞では上記の炎症性サイトカインを作用させるとNucleotide pyrophosphatase/phosphoiesterase(NPP)ファミリー蛋白であるAutotaxin(NPP2)遺伝子発現の亢進が認められた。NPP2はATPからAMPを産生する酵素であるが、炎症巣で蓄積するリゾホスファチジルコリン(LPC)を細胞増殖促進作用を有するリゾホスファチジン酸(LPA)に変換する反応も触媒する。実際、炎症性サイトカインで処理した細胞はLPCに依存して増殖が促進した。以上の結果から、炎症性サイトカインはプリン受容体情報伝達系を変化させ、血管内皮細胞ではATPに対する応答性を亢進し、組織修復に関与する線維芽細胞ではATPの分解を促進し増殖促進を生じる可能性が示唆された。
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J Cardiovasc Pharmacol Ther. 9(1)
ページ: 43-50
J Leukoc Biol. (in press)
J Biol Chem (in press)