MAPキナーゼキナーゼキナーゼであるASK1の血管新生および血管リモデリングにおける役割について検討した。ASK1遺伝子ホモ接合性欠失マウス(ASK1ノックアウトマウス)とドミナントネガティブASK1の組換えアデノウイルスを用いて、in vivoの虚血モデルおよび培養血管内皮細胞を用いたin vitroの研究を行った。虚血により、酸化ストレス増加を介してASK1が著明に活性化され、それが白血球、マクロファージ、Tリンパ球などの炎症細胞浸潤やVEGF、MCP-1の発現を増加することにより血管新生が促進されることがわかった。また、その機序にASK1の下流にあるp38とJNKの関与が示唆された。さらに、Matrigel plug assay法により、アンジオテンシンIIによる血管新生を検討したところ、アンジオテンシンIIによる血管新生作用の機序にも、ASK1が関与していることがわかった。さらに、血管リモデリングの分子機序を明らかにするために、カフ留置やバルーン障害による血管肥厚モデルを作製し、ASK1の役割と機序について検討した。ASK1ノックアウトマウスとドミナントネガティブASK1を用いたin vivoおよびin vitroの実験から、酸化ストレスで活性化されたASK1がp38とJNKを介して平滑筋細胞の増殖や内膜への遊走を促進することにより、血管内膜肥厚に関与していることがわかった。一方、骨髄細胞のASK1の関与についても検討するために、野生型マウスとASK1ノックアウトマウス間で骨髄細胞移植をおこなったが、血管内膜肥厚の程度に影響はなく骨髄細胞の関与は少ないと考えられる。以上から、ASK1は血管新生や血管リモデリングの新たな治療標的分子として期待される。
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