I型糖尿病モデルのストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病ラットおよびII型糖尿病モデルのGoto-Kakizakiラットを用いてスタチンの影響を検討した。STZ誘発I型糖尿病モデルでは、STZ投与量を24mg/kgまたは32mg/kgとし、軽症と重症のモデルを作製した。アトルバスタチンおよびプラバスタチン各8mg/kgをラットに3週間連続経口投与した。軽症I型モデルである24mg/kg STZ誘発糖尿病ラットでは、アトルバスタチン投与によって糖負荷時の耐糖能が悪化したが、糖負荷によるインスリン分泌量には、変化を認めなかった。重症I型モデルである32mg/kg STZ誘発糖尿病ラットでは、もはやアトルバスタチン投与による耐糖能、インスリン分泌に対する影響は認められなかった。いずれの場合もプラバスタチン投与は影響しなかった。II型糖尿病モデルであるGoto-Kakizakiラットでは、アトルバスタチンおよびプラバスタチンは、糖負荷刺激による耐糖能、インスリン分泌のいずれにも影響を与えなかった。以上の結果から、いずれのスタチンもI型・II型糖尿病モデルのインスリン分泌に影響しなかったので、アトルバスタチンが軽症I型糖尿病ラットの耐糖能を悪化した機序は、インスリン受容体から糖の取り込みに至るまでの細胞内情報伝達への影響が示唆され、基礎実験としてインスリン標的臓器の情報伝達系を検討した。糖負荷1時間後に摘出したSTZ誘発軽症糖尿病ラット骨格筋は、インスリン受容体のリン酸に変化を認めなかったが、Aktのリン酸の低下が認められた。
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