慢性骨髄性白血病原因分子BCR/ABLは、強力なチロシンキナーゼ活性を持ち、細胞の増殖を促進、アポトーシスを抑制する。近年、BCR-ABL分子標的薬であるイマチニブ、耐性機序の一つとして、BCR-ABL蛋白質の発現増加が指摘されているが、これに対して、BCR-ABL蛋白分解促進作用を有するHsp90阻害薬の開発が注目されている。しかし、BCR-ABL蛋白の安定化および分解機序についての詳細は、まだ明らかにされていない。本研究では、分子シャペロンによるBCR-ABLタンパク質の分解制御機構について詳細な検討を行い、下記について明らかにした。 1.BCR/ABLタンパク質は、ユビキチン連結酵素であるcarboxyl terminus of the Hsc70-interacting protein(CHIP)およびc-Cblにより、ユビキチン化され、プロテアゾームおよびリソゾーム系で分解されることを明らかにした。 2.BCR/ABL依存性Ba/F3細胞の増殖は、CHIPおよびc-Cblの過剰発現により特異的に阻害されることを明らかにした。 3.CHIPおよびc-CblによるBCR/ABLの分解に必須の領域を明らかにした。 4.BCR/ABL分子標的薬イマチニブとHsp90阻害薬の相互作用について明らかにした。 5.N-acetyl-cysteineによるBCR/ABL依存性細胞増殖促進作用に対するHsp90阻害薬の拮抗作用の分子機序を明らかにした。
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