ニューロンやアストロサイトなどの中枢神経系の細胞に分化することが出来る神経幹細胞は、発生段階において脊椎動物の中枢神経系のさまざまな領域に存在する。また、神経幹細胞はその数は少ないものの成体の中枢神経系にも存在している。申請者は、神経幹細胞は血管前駆細胞的な発生ポテンシャルを持ち合わせていて、神経幹細胞が中枢神経系の細胞のみならず内皮細胞や平滑筋細胞に分化し脳血管を形成するものと考え、本研究を計画するに至った。そして、平成17年度まででは、神経幹細胞が脳血管を構成する内皮細胞や平滑筋細胞に機能的分化することを明らかにした。そこで、最終年度の平成18年度では、脳組織に移植した神経幹細胞が血管を形成することin vivoで明らかにする目的で行なった。すなわち、麻酔した成体マウス(C57BL/6、雄8週齢)を脳定位固定装置に固定し、蛍光蛋白質のEGFPトランスジェニックマウスより単離培養したEGFP神経幹細胞を右側脳室内に移植した。移植後脳を摘出し、免疫組織染色法により検討した。脳室内に移植したEGFP神経幹細胞は、移植後30目目の脳切片海馬領域においてPECAM-1陽性の血管様構造を構築していた。また、脳虚血後の梗塞巣においては、移植後6目目で血管様構造を構築した。以上の結果より、外胚葉由来の神経幹細胞が脳血管前駆細胞的な機能を有し、脳血管の形成や再構築に関与することが明らかとなった。本研究成果は、脳血管形成機構の新たな可能性を示すとともに、脳循環疾患の発症機構の解明や治療薬開発に寄与できるものと考えられる。
|