研究課題
ATP受容体作動性血管透過性調節機構の血管部位差に関する比較検討ラット尾動脈、ヒト臍帯静脈、ヒト冠状動脈の培養内皮細胞を用いて比較検討したが、それぞれの血管透過性調節機構はほぼ同様であり、ATP受容体もP2Y1が主なものであった。ATP受容体の血管透過性調節機構に関する検討ATP受容体に関連する膜下クロストークを明らかにするために、まず膜下シグナル分子について検討した。2meS-ATPにより観察された透過促進作用は、myosin light chain kinase(MLCK)阻害薬であるML-9およびRho-kinase阻害薬であるY-27632によって有意に抑制され、2meS-ATPによる細胞面積減少作用についても同様の結果を得た。以上の結果から、ATP受容体による細胞形態調節作用にはMLCKやRho-kinaseのような収縮制御タンパク分子が関与すること、この細胞形態変化が内皮細胞間物質透過に関わっていることが強く示唆された。腫瘍細胞とATP受容体作動性血管透過性調節機構との機能的関連性に関する検討腫瘍細胞の転移・増殖とATP受容体との関連性を解明するために、まず腫瘍細胞からのATP遊離について検討した。腫瘍細胞としてはマウスB16 melanoma細胞を用いた。このB16細胞において、ATPなどプリン物質の自発的な放出を観察した。この放出量とその細胞系列の違いを比較検討すると、B16-FO=B16-F1<B16-F10の順であり、転移能の大きいほど放出量が増加する傾向がみられた。さらにこの放出はPKC(癌細胞の転移時に重要な役割を果たすと考えられている)の選択的阻害薬であるPKC412により抑制された。以上の結果より、ATPは腫瘍細胞の転移において、促進的な役割を果たしているという可能性が示唆された。
すべて 2004
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