研究課題/領域番号 |
16590212
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
桂 昌司 川崎医科大学, 医学部, 講師 (80204452)
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研究分担者 |
渡辺 悟 川崎医科大学, 医学部, 講師 (90069055)
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キーワード | 薬物依存 / 初代培養大脳皮質神経細胞 / 高電位開口性カルシウムチャネル / up-regulation / 依存性薬物 / 蛋白質リン酸化 / 細胞内カルシウム感受性蛋白質 / calcium-induced calcium release |
研究概要 |
本研究では、薬物依存形成過程に共通するL型高電位開口性カルシウムチャネル(HVCC)の機能亢進の機序解析と、薬物依存の遺伝子治療への応用を試みる目的で、昨年度に続き薬物依存形成時におけるL型HVCC subunitの発現調節機序と依存状態の関連性について検討した。諸種の薬物依存モデル動物あるいは依存性薬物を連続曝露した神経細胞を用い、脳内L型HVCCの機能変化の共通性および相違点について検討したところ、精神および身体依存を誘発する依存性薬物ではその種類に関係なく共通にL型HVCCの機能亢進を誘導するが、その発現様式には明らかな相違が認められた。この薬物依存成立過程において認められるHVCCの機能変化には、L型HVCC α1 subunitのリン酸化に伴う調節は関与しないこと、細胞内リアノジン受容体(RyR)機能亢進に伴う細胞内Ca^<2+>濃度の上昇(Ca^<2+>-induced Ca^<2+> release)が重要な役割を担っていることが判明した。さらに、細胞内RyRを一過性に機能抑制させた動物では、依存性薬物による報酬効果が減弱・消失することが初めて観察されたが、身体依存の成立を抑制することはできなかった。L型HVCCの機能調節に連関する諸種の細胞内機能性蛋白の発現・動態変化について検討したところ、細胞内Ca^<2+>センサー蛋白(NCS-1)の有意な細胞内局在の変化が、細胞内RyRの機能亢進に先行して生じることが明らかとなった。本研究の結果から、依存性薬物によるL型HVCCの機能亢進を介した細胞内Ca^<2+>の動態変化が薬物依存形成に重要な役割を担っているものと考えられ、またこれら疾患に至る神経化学的な共通経路としてL型HVCCの発現変化が極めて重要であることが判明した。さらに、身体依存にみられるL型HVCCの発現変化の機序は精神依存の場合とは異なる様式であることが判明した。
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