研究概要 |
本年度の研究の結果、以下の成果を得た。 1 EID-2類縁分子として新たにEID-2-1ike inhibitor of differentiation-3(EID-3)をクローニングした。これによってEID-1,-2,-3からなる新しい分子ファミリーという概念を提唱することができた。 2 EID-3はEID-2と同様に、過剰発現系において細胞分化を阻害することを明らかにした。特にマウス筋芽細胞株C2C12を用いた系では、発現レベルの高いものでは細胞死を来すこともわかった。 3 EID-3はEID-2と同様に、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)と結合し、分化に関わる転写因子(MyoDなど)の転写活性を抑制することを明らかにした。HDACファミリーの中でも特にクラス1HDAC(HDAC1,2)と結合することもわかった。 4 EID-3は核内に局在し、この機能はHDACとの結合および転写阻害機能と共通のドメインを利用していることを明らかにした。 5 EID-2およびEID-3がEID-1と同様に、癌抑制遺伝子産物pRBと細胞内で複合体を形成するすることを証明した。 6 EID-2およびEID-3遺伝子は同一染色体上の近傍に位置し、この両方を含むアンプリコンがある種の癌細胞株で増幅していることがわかった。 以上をまとめると、1から5の結果によって、EID-2およびEID-3の生化学的・生物学的機能をよりいっそう明らかにすることができた。また5,6の結果から、EID-2およびEID-3の発がんにおける役割が推測された。
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