研究概要 |
ショウジョウバエや酵母において染色体分離の調節蛋白質として同定されたプロテインキナーゼのヒトホモローグであるAurora-A,Aurora-BおよびAurora-Cは様々ながん組織においてDNA増幅や蛋白質の発現増強が高率に認められている。またAurora-Aにおいては造腫瘍能を有することも報告されている。本研究では、がん特異的に発現が亢進しているAurora-Aがどのように時間的・空間的・物理的にがん特異的細胞周期を制御しているのかを解明するため、その分子基盤を検討した。 ・AuroraファミリーをGFP融合タンパク質として発現する細胞株を樹立しタイムラプス観察を行い、時間的空間的配置を決定した。(研究業績#2) ・Aurora-Aおよび-Bのリン酸化コンセンサス配列を決定した。分裂期にリン酸化されえることが知られているヒストンH3の10および28番目のセリンがAurora-Bによりリン酸化されることを照明した(研究業績#5)。 Aurora-Aおよび-Bは自己リン酸化により活性化され、オカダ酸感受性のフォスファターゼにより活性化されるが分裂期にはフォスファターゼがCdk1によりリン酸化され不活性化されるため負の制御から開放されるという機構を解明した(研究業績#1および#5)。 ・Aurora-Cは、染色体パッセンジャータンパク質であるINCENPと結合し活性化されるなどAurora-Bと類似した生化学的特性を有している。さらにAurora-Cの細胞内挙動はAurora-Bと同じであり、新規の染色体パッセンジャータンパク質であることを証明した。(研究業績#2)。 本研究により、すべてのAuroraファミリーがヒト細胞においてがん特異的細胞周期を制御していることが明らかとなり、がん治療の新しい分子標的となり得ることが判明した。
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