研究課題
本研究では成長因子の2つのトラフィック(分泌系生合成とエンドサイトーシス後トラフィック)に取り組んできた。今年度は特にエンドサイトーシス後のトラフィックについて進渉があった。ヨードラベルしたMKのエンドサイトーシス後の分解をみると、リソゾーム阻害剤、プロテアゾーム阻害剤両者とも同等の分解抑制を示したが、核画分に注目するとプロテアゾーム阻害剤のみがMK分解を抑制した。一方、小胞体・ゴルジ体間輸送の阻害剤は抑制効果を示さなかった。そこで、細胞質で産生されるMK(シグナルシークエンスを欠く)を発現させた。細胞質で産生されるMKは核へと移行した。そしてこの核移行はプロテアゾーム阻害剤で増強した。さらに細胞質で産生されるMKはユビキチン化を受けた。これらのデータは成長因子MKがエンドサイトーシス後に細胞質へ何らかの機構で確かに移行すること、そして細胞質あるいは核へ移行したMKがプロテアゾームによって分解されることを示唆している。エンドサイトーシス後のトラフィックについては、神経芽腫TGW細胞のレチノイン酸処理あるいはCHO細胞のMK過剰発現の解析から、MKが未熟はLDL receptor-related protein(LRP)と結合して小胞体内で凝集体を形成していることを証明した。そこでLRPの小胞体シャペロンであるRAPの発現を補うとMKの分泌が促進された。RAPの導入により凝集体形成が抑えられ、レチノイン酸による細胞死も抑制された。そして、RAPの高発現がヒトの癌組織で実際に起こっており、MKの発現プロフィールと一致することを見出した(投稿準備中)。また、虚血再灌流による腎障害、シスプラチン腎症さらには癌進展に対してMKアンチセンスオリゴヌクレオチドが効奏することを示した。これらの病気の治療にMKが分子標的となりうることを示せたといえる。
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