研究課題
前年度までに成長因子ミッドカイン(MK)がエンドサイトーシス後にエンドゾームから細胞質へ移行し、さらに核へ移行するトラフィックの存在を確認した。本年度はこのような機構を含めて、MKによるシグナリングが、生体にどのような影響を及ぼすかを調べるために、腎障害モデルを中心に解析を行った。その結果、腎障害(間質性腎炎、シスプラチン腎症、糖尿病性腎症)の発症にMKが関与し、その治療に重要な標的分子となりうることを明らかにした。間質性腎炎ではMK欠損マウスの症状が野生型に比べて軽い。そこでMKアンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)を全身性に投与すると、MK ODNは尿細管上皮に取り込まれ、尿細管上皮のMK発現が抑制され、症状が回復した。シスプラチン腎症でもMK欠損マウスの症状が軽く、MK ODNを投与することで野生型の症状も軽減した。糖尿病性腎症でもMK欠損マウスの症状が軽いことが分かった。以上の3つの腎炎の発症に共通して関わるのは炎症であり、いずれのモデルでもMK欠損マウスで炎症細胞の浸潤が低かった。好中球やマクロファージなどの炎症細胞がMKの標的細胞になっている可能性がある。MKのエンドサイトーシスによる細胞内のシグナリングが炎症細胞の遊走に関わる可能性も考えられる。今後は、左記の可能性に迫るとともに、MKの核移行を阻害することによって、細胞および個体レベルでどのような影響が出るのかに注目していきたい。
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