研究概要 |
低分子量G蛋白質Rhoの標的蛋白質の一つであるmDiaを中心とした生化学的、細胞生理学的研究より、新たなシグナル伝達系としてRho-mDia-Src系、新規mDia結合蛋白質DIPを同定していたが、DIPがSrc依存的にp190RhoGAPを介してRhoを不活化し、Vav2を介してRacを活性化することを見いだすとともに、この経路が細胞運動の時空間的制御に重要であることを示した。そこで、上皮細胞系で見いだしたこのシグナル伝達経路の神経の軸索伸展効果における関与を検討した。既にmDiaが軸索伸展効果を有することを発表していたが、PC12細胞においてDIPがmDiaの下流で上述した経路を介し軸索伸展を促進することを確認した。また、マウスの胎生期、新生時期、adultの時期にmDia,DIPのmRNAが脳のほぼあらゆる部位で発現することをin situ hybridization法やRT-PCR法を用いて確認するとともに、新生仔マウスの海馬神経細胞の初代培養系において、DIPが錐体細胞の突起伸展初期から軸索・樹状突起全体に存在することを免疫染色法にて確認している。H16年度から作製を開始していたDIPノックアウトマウスが最近完成したので、中枢神経系(特に海馬など)での発生期における軸索伸展過程へのDIPの関与をノックアウトおよび野生型マウスの脳組織を免疫組織学的に比較検討している。また、新生仔マウスの海馬細胞の初代培養系を用い神経突起伸長におよぼすDIPの作用を検討し始めたところである。さらに、ノックアウトおよび野生型マウスより繊維芽細胞を採取・培養し、細胞運動能等を比較検討しているところである。これらの検討から、細胞運動・細胞接着に関連したシグナル伝達機構をさらに明らかにすると共に、個体レベルで病態に関連したDIPの生理機能を解明していく予定である。
|