研究概要 |
昨年度より自然免疫に重要な補体依存性の食作用に着目して分子機構の解明に取り組んできた。食細胞としてマクロファージ様に分化したヒト白血病細胞株HL60、感染微生物モデルとしてZymosanを血清中で処理して補体活性化成分C3biと結合させて用いた。その結果、補体依存性のファゴサイトーシスにおいてチロシンキナーゼSykが補体受容体CR3を介した食胞の形成と輸送に必須の役割を果たし、その下流でRhoAが活性化する事を明らかにした。今年度は、この成果をさらに発展させて1、食胞形成プロセスに、細胞骨格タンパク質がどのように関与するのか、F-アクチンの集積を蛍光顕微鏡にて解析した。C3bi-Zymosanが細胞膜に結合すると速やかにその周囲へF-アクチンが集積した(5分)。さらにファゴサイトーシスが進み完全に取り込まれた食胞ではF-アクチンの集積は認められなかった(30分)。アクチンの集積は食胞形成時に重要だが、その細胞内への輸送にはむしろF-アクチンの乖離が必要である事が示唆された。さらにこの一過性のF-アクチンの集積にSykがいかに関わるか、HL60と変異株(Dominant-negative Syk/HL60、Syk-siRNA/HL60、Rescue-Syk/Syk-siRNA/HL60)を比較した。その結果、Sykが食胞形成初期に必須のF-アクチンの集積に重要な役割を果たすことが明らかとなった。 今年度はこれらに加えて2、血清処理法によるオプソニン化についてより詳細に解析した。抗体を除去した血清およびC3変換酵素阻害剤Compstatinを用い、この方法が抗体非依存的、補体特異的ファゴサイトーシスを誘導することを証明した。またこの処理法はヒト単球を用いた場合にも適用された。 本課題の2年間の成果は米国血液学会誌Bloodに報告した(2006,in press)。
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