細胞内でのジアシルグリセロール(DG)とホスファチジン酸(PA)のシグナル伝達機能が注目されており、従来のプロティンキナーゼCに加えて、これらの脂質に対する特異的な標的蛋白質が多数明らかになってきている。本研究では、ラットの肺、卵巣、胎盤の発育、分化過程におけるDGキナーゼ(DGK)の発現パターンと、細胞内分布を比較検討し、多数のDGKアイソザイムの臓器発生、成熟化における異なった役割を示唆した。これまで9種のヒトDGK遺伝子の存在が知られていたが、第10番目のヒトDGK遺伝子をクローン化してDGK kappaと命名した。DGK kappaは構造上の特徴からII型グループに分類された。これまでのDGKアイソザイムと異なり、DGKkappaは未刺激細胞でも恒常的に表面膜に存在し、酸化的ストレス下でチロシンリン酸化を受ける。DGK gammaについては、各種培養細胞に発現後、培養時間とともに細胞質から核に移行することを発見した。Kinase-deadのDGK gammaを発現して解析した結果、この核内のDGKアイソザイムが細胞増殖調節因子として働くことが明らかとなった。
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