シスチン・グルタミン酸トランスポーターX_c・系の実質的な輸送担体と考えられるxCTをコードする遺伝子をノックアウトしたマウスの作製に成功した。遺伝子が目論見どおり改変されたことは、サザン法によっても確認した。このマウスはxCTのmRNAを作らず、また、シスチン・グルタミン酸トタンスポーターの活性を欠いていた。しかし、10週齢ほどまで順調に生育し、繁殖能力も正常であった。この週齢のマウスでは、主要臓器の組織学的検査、および血液についての一般的な血液学的・生化学的検査において、野生型との間に有意な差は見出せなかった。ただし、血漿アミノ酸を測定したところ、シスチンのみがノックアウト型で有意に高くなっていることが示された。また、このノックアウトマウスの妊娠14日胚を用いて細胞培養を行ったところ、通常の培養条件下では培養できず、細胞が死滅していくことが観察された。同腹の野生型、ヘテロ型では旺盛に増殖し継代培養できるのに比べると、際立った違いといえる。この細胞に2-メルカプトエタノールを添加すると、野生型と区別できない増殖を示すようになることから、このノックアウトマウスの細胞は培養下では培地のシスチンを利用できず、結果として細胞内のグルタチオンが著しく減少し、外界からの酸化ストレスに抵抗することができず、死に至るものと考えられた。このノックアウトマウスがさらに週齢を加えたとき、および酸化ストレスを人為的に負荷したとき、どのような表現型を示すかを調べることが今後の課題である。
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