研究課題
基盤研究(C)
本研究のねらいは、ヒト多段階発癌に寄与する活性酸素(ROS)産生遺伝子Noxファミリーの機能的役割をRas発癌モデルを用いて解明し、癌の予防・診断・治療の基礎を築くことにある。申請者は既に、Ras-Raf-MAPKK-MAPK経路に介して誘導されるNox1がRasの癌化形質に必要であることを発見した。また、高頻度で、K-Ras活性型変異が認められるヒト大腸癌で、Nox1の高発現を検出した。我々は、この知見に基づき、Nox1の産生するROSが情報伝達分子として癌化形質維持に、必要であるという新機構を提唱した。本研究では、1)他のNoxファミリーによるヒト癌の媒介的役割の解明、2)Nox1によって産生されるROSの標的候補の機能的解析を行い、上記仮説のさらなる検討を行った。研究項目1:Nox4は、AKT-ASK1を介して、膵癌細胞のcell survivalに寄与することを初めて示した。メラノーマの場合、Nox4は細胞周期を調節し、その不活化により造腫瘍能が抑制されることを明らかにした。研究項目2:TOF-Massにより、小胞体蛋白のPDIファミリーに属する蛋白と同定した。この蛋白は、細胞膜に局在することも、見出した。以上の結果により、Nox4も細胞内ROSの産生を増加させ、膵癌やメラノーマ細胞の生存に、必須的役割を果たしていると考えられる。また、AKT/ASK1情報伝達の意義を解明したことは、大きな前進である。また、Nox1の下流標的蛋白の候補として小胞体蛋白が同定された。今後、この蛋白のreductase、chaperoneの如何なる活性が関与するかを解析したい。以上、癌化形質の維持に必要とされるNoxのレドックス情報伝達機構を新しい視点の方法論により解明することを目指す。
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